pagumixのブログ

むかしのはなし

【コンサート備忘録】JUJUのJAZZとあの子と笑顔

 

先日、といっても2ヶ月前の7/21 21:00、オンライン上で配信という形で配信されたJUJUのコンサートに参加した。

それがあまりにも特別なコンサートだったから記録に残してみたい。

 

ブルーノート東京から生配信で行われたコンサートだったが、まだ "あの子" がこの世を去ってから幾日しか経っていなかった頃の開催だった。

私自身大変落ちていた時期であったし、公私共に仲のよい友人を失ってすぐの状態のひとが完全なパフォーマンスを披露してくれるなんて思えなかった。

が、当日の19時半、開演の30分前、今日どうしても私はこのコンサートを見るべきだという思いに駆られてチケットを購入した。

 

対面でのコンサートと同じでアーカイブ機能は無いし、ましてや録画なんてもってのほかといった環境で、分かってはいたけれど心がざわざわして少し躊躇してしまい、開始から数分遅れて参加した。

今にもディズニーのショーが始まるような、ワクワクする気持ちを誘われる "A Woman Needs Jazz" という曲と共にスタートした公演。

歌い方も曲調に合わせて少し弾んだような、暖かくて心地の良いはじまりだった。

A Woman Needs Jazz

わたしの願い かなえてよ

どこかへ連れてって 誘いだして

あたらしい出会いが待つ場所へ

 

JUJUさんは微笑んでいて 、ああ、多分今日この人はこのまま、このエネルギーのままこのコンサートをやり切るんだなと思った。

 

もちろん、関わりの深い人が亡くなったからってその件に公の場で触れなければならないなんてことは断じてない。

その人が感じていることや、深い悲しみが次の日にでもキャッチーなタイトルをつけられたニュースになって、全く関係のない人々の好奇の目に晒される可能性だってある。

人の感情が大きく揺れる瞬間に、良くも悪くも人は強く惹かれる。

 

彼女は土曜の丑の日の夜だということに触れた。

うなぎでなくても、 "う" のつくものであればなんでもいいのだそうだ。

憂いを吹き飛ばす勢いで盛り上げていこうと笑顔で語った。

人が誰かと出会って何かが起こる。

出会って、いい感じになって、家を行き来するような間柄になって、、、

好きな人の元を行き来する、自分の状況にうっとりするような

流れのイメージと共に連続で三曲披露した。

 

"Night And Day"

歌曲王コールポーターの有名なジャズソングだ。

彼の作った曲を聞くとどうしても、狂騒の20年代のパリの街が目に浮かぶ。ピカソやダリ、ヘミングウェイなど、名だたる芸術家たちがこぞってパリを訪れガートルードスタインの言うところの "ジェネラシオンペルデュ" ロストジェネレーションを築いた。

 

Night and day, you are the one

夜も昼も、あなただけ

Only you beneath the moon and under the sun

月の下にいるのも、太陽の下にもあなただけ

Whether near to me or far

近くにいたとしても、遠くにいたとしても

It's no matter darling where you are

あなたがどこにいるかなんて関係ないの

I think of you night and day

夜も昼も、あなただけ

 

"You'd Be Nice To Come Home To"

三曲目も言わずと知れた名曲、こちらもコールポーター作曲だ。

You’d be so nice to come home to

家に帰ったとき、そこに君がいてくれたなんて素敵だろう

日本語訳でどう表示されていたかは記憶にないが、この文法的にはおかしな文章をどまじめに訳すとしたらこうなる気がする。

あま〜〜〜い愛の歌だ。出会って、蜜月になって、夢中になって、プロポーズにでもなってしまいそうな甘い歌だ。

 

"Candy"

これは個人的に大好きな曲

Candy

キャンディー
I call my sugar Candy

私は彼のことをキャンディーって呼ぶの
Because I’m sweet on Candy

だって私は彼に夢中だし
And Candy’s sweet on me

彼も私に夢中だから

あま〜〜〜〜〜〜〜〜〜い甘すぎる歌。

彼をmy sugarって呼んでしまう時点でかわいい、さらに好きすぎるからキャンディーって呼んじゃう♡ッカ〜〜〜〜〜胃もたれでもおこしそうな甘さ!(JUJU談)

 

この三曲の流れが最高だった。

ここまで一気に歌い上げて、軽い解説を挟んだあと、こう言う状態が長くずっと続けばいいのに、長くは続かないんですね、と、

 

『自分が思ってもいなかった誰かとお別れしてしまったあなたへ』

 

”みずいろの影"

私だけに見せるやさしさも  

私だけが知ってる声も

想い出にするには まだ早い

胸のいたみがささやくの

みずいろの影 追いかけて

 今までにも何度か聞いたことのある素敵な曲ではあったが、今にもすっと消えてしまいそうな切なさの中にも、強い芯を持ってしっかり歌い上げる彼女の姿に胸を鷲掴みにされてしまった。

 

愛する人との別れを歌った曲だが、一緒にいるときには気づくことのできなかった大切さや後悔、ふたりの運命が共になかったのだと自分自身に言い聞かせて前を向く。

これから交わることがなかったとしても、気持ちが消えてしまうことはない。 

 恋愛に限らず、生きていれば何度も経験することになる出会いと別れに対する

誠実さと、相手をほんの少しずるく思う気持ちを感じた。

 

JUJUとJAZZ

もうすぐ夏ですね、と話し、

 

”Summertime”

Your daddy’s rich

あなたのお父さんは金持ちで

And your mamma’s good lookin’

お母さんは美人さん

So hush little baby

だからね、赤ちゃん静かにね

Don’t you cry

泣かないでね

調べたところ、これはオペラに使われた曲なんだそう。黒人女性が、自分の子もにも会えないのに白人の赤ちゃんをあやし、あなたの両親がいる限りあなたは傷つくことないわと歌う曲なんだそうだ。

穏やかで暖かい雰囲気とは裏腹に、重いテーマを扱った曲だ。

 

そしてここで

"Take Five"

知らない人はいないほどの王道ジャズソングだ。

MCで話していたが、以前まさかのドラマオファーがきた際、歌手である自分が演技の世界なんてと思っていたが、この役を引き受けなかったら主題歌でもあるこの曲を歌わせてもらうことができない。自分以外の人に歌われてしまうのはイヤだ!と、セリフなしの条件で受けたのが唐沢寿明主演『TAKE FIVE~俺たちは愛を盗めるか~』だったそう。

軽やかに、色っぽく、これぞジャズ!といったところを見せてくれたように思う。

 

”When You Wish Upon A Star”

ディズニーアニメ『ピノキオ』の主題歌『星に願いを』の、メロディーラインの美しさが際立つジャズアレンジバージョン

 

〜MC〜

この辺で一回『ドゥワドゥワする?』

聞かれて一人で

『ドゥワドゥワする〜!!』

って答えてました。

 

"It Don't Mean a thing" 

大変名曲である曲の登場に、素直に大興奮だった。

この配信を他で聴いていた人たちもきっとここでノリノリになったんじゃないかとも思う。

昔宝塚でよく聴いていたとても馴染みのある曲だったので、それを原語で、大好きなJUJUのコンサートで聴けて幸せだった。

(Doo wah, doo wah, doo wah, doo wah)

(Doo wah, doo wah, doo wah, doo wah)

 

そして

"Remenber(The Good Times)"

 

Remember 声合わせうたった優しい歌

そんなときもあったふたり

Remember the good songs Remember

 

三浦春馬さんとともにMCを務めた、"世界はほしいモノにあふれてる" のオープニングテーマとして JUJUが書き下ろしたのがこの "Remenber(The Good Times)"

この番組をきっかけに書かれた曲でもあり、彼女のアルバムDELICIOUSシリーズの三作目はこの曲があったからこそ制作されたものであったそう。

 

一際しっかりした声量で、力強く歌いながらも歌詞の途中に涙が滲んでいた。

画面を通してではなかったらほんとうは今すぐにでもステージに駆け寄って一緒に歌いたいとも思った。

あの時はまだ、追悼なんて気持ちにもなれていなければ、彼がいなくなったと言う現実を受け入れることもできていなかったけれど

そんな状況の中でこの曲を当日コンサートで歌うことを選択してくれた彼女の強さと、責任と、パワーの全てを抱きしめたくなった。

 

”世界はほしいモノにあふれてる”、どのくらい続くのかなとかって思っていたらまさかの二年目に突入して。

テーマソングを作ることにもなった。

この話に触れ始めると、いろいろなことに触れた方がいいのかなと思う。

ただ、それをやるためには、思い出があるので、

その話をするには、今の倍の時間がかかります。

そして、今ここでそれをやってしまうとみなさん

ここから4、5年抜け出せません。

今の私の気落ちを簡潔に言うことはできません。

今の自分の気持ちは全て今の歌に込めたはずです。

 

私たちは少しずつ、思い出との折り合いをつけてゆくのだと思う。

 

感情が大きすぎて思わず目をそらしてしまいたくなったが、

あまりにも早すぎる、突然の別れ

言葉をつまらせながらも、まだ気持ちの整理もついていないであろう時期にこの話題について触れる懸命な彼女の姿から目を離すわけにはいかなかった。

一瞬でも、その日、彼女のコンサートを見ることで負の感情のループから抜け出すきっかけを少しでも得られるかもしれないなんて考えた、

自分のずるさに心が苦しくなった。

気持ちを立て直すきっかけをひとに頼るべきではない。

自分の中に残っている思い出と、今のぐちゃぐちゃな感情と、折り合いをつけて進んでいけるかはいつでも自分次第だった。

少なくとも今、画面の中で話している彼女は

今までにもたくさんのことを見て知って、経験してきて、

彼女なりのあり方を知っているのだと思った。

 

それまで本当に、何かがあったとは思えないくらい普段通りに、いつもの陽気な姿でコンサートを進めてきていただけに、

心の内を話す彼女は今にも消えてしまいそうなくらいのショックを受けていて、

それでも絶対に壊れてしまうことのない強さを持っていたように見えた。

 

彼女はここで、カメラに向かってニコッと笑った。

結局笑顔が大切なのだという。口角を上げると脳が錯覚を起こし、何かいいことがあったのだと勘違いをするらしい。

ニコッと口角を上げてみることで、見逃していた何かが見えるかもしれない、と微笑んで語った。

 

"Smile"

Smile though your heart is aching

微笑んでみて 心が痛くても

Smile even though it's breaking

微笑んでみて 辛いことがあっても

When there are clouds in the sky, you'll get by

もし空に白い雲があるのなら 君は困難を乗り越えることができる

If you smile through your fear and sorrow

怖れや悲しみの中にあっても 君が笑えるなら 

Smile and maybe tomorrow

微笑んでごらん そしたら明日には

You'll see the sun come shining through for you

太陽が君を照らすのが見えるだろう

 

あまりにもぴったりな歌詞に思わず微笑んでしまった。

なにも、はい!全て忘れて笑いなね!というわけではない。

笑顔になること、はあくまで悲しみに向き合い、乗り越えていくための方法の一種にすぎないのだ。

笑顔になって少し上を向いてみることで、ああここにいいことがあったんだと気づくきっかけになるかもしれないし、塞ぎ込んでいては悪いことにしか見えていなかったことにも思わぬ良点が見つかるかもしれない。

 

"What a Wonderful World"

Yes, I think to myself, what a wonderful world

そう、私は心の中で思うの なんて素晴らしい世界なんでしょうと

 

 今回のコンサートでJUJUが披露した曲は全て、彼女のアルバム "Delicious" シリーズからだった。このシリーズは、すべての出来事をデリシャスにしてしまおうという思いから企画されたものであるという。

 

"そんな簡単に笑顔になんてなれないよ!"

なんて人も沢山いると思う。でも皆さん、誰にでも

"お気に入りのもの" あるでしょう?

理不尽なことなんて沢山ある。そんなときにお気に入りのものたちを思い浮かべる。

嫌な気持ちに支配されてしまわないように。

思い出して少しでも気が楽になるように。

 

"My Favorite Things"

I simply remember my favorite things

お気に入りの物たちを思い出すの

And then I don't feel so bad

そうすれば気分だってわるくならないわ

 

素朴でピュアな、明るくかわいらしいお気に入りのものについてのうた。

 どんなに辛いことがあったとしても、自分のために、自分のお気に入りのものたちを頭の中に呼びだして、少しでも元気が出るように。

 

思い出して、少しでも、悪いもんじゃないなと思えるように

 

 

 

 

まるでひとつの物語の中にいるような、自然で迷いのない大きな流れにのまれた約2時間だった。

セットリスト通りに作ったプレイリストを聴きながら、画面を見ながら必死に書いたメモを見返して、何度もあの感覚を思い出している。

デトックスとかヒーリングみたいなものでなくて、

単に素晴らしいものを見ることができたのだと思う。

 

画面上に表示された英語歌詞の和訳は全て、JUJUさん本人によるものだったのだそう。

このブログの中で記載した歌詞たちの和訳は参考程度に私が勝手につけたものであるため、コンサート内での解釈とは違っているところがあるかもしれない。

隅から隅まで考えられて、愛の込められたコンサートだった。

 

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